pre-posi blog

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蒼の教室 #1

■1■


 夢を見ていた。

 乾いた空気と強烈な日差し。
 青い空。

 それだけしかない。

 呼吸も
 口内の唾液も
 心臓から駆けめぐる血液も、
 すべてを溶かしてしまうような
 青の世界。


 さびしい。
 でももう大丈夫だから
 ありがとう。

 上も下も無かった世界に急に重力が現れ
 わたしは落下していく。より深き蒼のセカイへ。

テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/05/11(日) 14:38:03|
  2. 小説
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図書室にて #11

■11■

 校舎前に黒塗りのセダンが止まる。
 そこへ1人の女子生徒―――図書室のあのショートカットの少女だ―――乗り込んだ。
 後部座席のドアが閉じられたあと、車は静かに発進する。


 その車は歩道でキスをしている二人の傍を通り過ぎる。


「キスしてた」

 後部座席の少女はそう呟く。

「二人ともわかーい」

「あなたと同じ年だから、ね」

 運転席で車のハンドルを握る少し厚めの化粧をした女性はそう返す。

「お母さん、あれ本当におじーちゃんと、おばーちゃんなの?」

「そうよ」

「でも、なんかおじーちゃん、あたしの知っているよりも何だか情けなかったー。
 それにおばあちゃんは昔から背が大きかったんだねー」

「大人になるといろいろと変わるのよ」

「あの後、おじーちゃんとおばーちゃんは、
 長距離をずっとメールでやり取りするんだよね?」

「メールのやり取りは、暫くしたら途絶えるようになっちゃたんだって」

「えー」

「移動手段を持たない中学生の遠距離恋愛なんてそんなもの。
 で、お互いがそれぞれの存在を薄っすらと忘れてきたころに、
 ……大学で再会するのよ」

「運命だー」

「うん、運命。
 その偶然の出会いで、お互いがとても運命的なものを感じて―――それから結婚までほぼ一直線というわけ。
 ……母さんね、この話を小さい頃からずっと聞かされてきたの。
 それで、なにか……幻想もっちゃったのかな? 結婚とかに」

「あたし、お母さんについていくよ」

「……ゴメンネ。
 お母さんとお父さん、仲が悪くなっちゃって……。

 でもね、あなたには希望を持って欲しいの。
 お父さんとお母さんだけを見て、結婚と恋愛に変な斜めの見方をしてほしくないの。
 わたし達の結婚は不幸だったけど、幸せな恋愛と結婚をした人たちもいるの。

 ……お爺ちゃんやお婆ちゃんみたいにね」

「うん」

「本当に幸せな恋愛があるんだって見せたくて、
 あの人に頭下げてこのタイムマシンを借りたんだから……」

「……うん」

「じゃ、帰りましょう。未来へ。
 わたしたちの『今』へ」


 道路を走る黒色のセダンが人気のない道から消えたのは、それから暫く後のことだった。


 END

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/04/23(水) 00:05:08|
  2. 小説
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図書室にて #10

■10■

 校門から暫くいくと、歩道を歩いているクラサワさんの姿を見つけることができた。
 夕方のオレンジ色の光の中、一人ぼっちで最後の帰り道を歩くその姿は何か物悲しかった。

 僕は走る。彼女の追いつくために。


「クラサワさん!」

 思ったよりも大きな声が出た。
 彼女は立ち止まり、驚いた様子でこちらに身体を向けた。
 走り寄る僕。そして気づく。彼女の目が涙で真っ赤になっていることを。
 クラサワさんはそれを誤魔化すようにに手でニ、三回目をこする。


「カナザワくん……どうしたの?」

「好きだ」

 言ってしまった。自分が選択できる台詞はこれしかなかったんだ。


 ニ ゲ ラ レ ナ イ 。


 そうだ、逃げられない。僕は彼女にこの言葉を言う事から逃げられない。

「金澤慎二は倉沢美希がスキだ」

 あの名も知らないショートカットの少女から告げられた言葉を、ほぼそのまま目の前の大好きな彼女に投げかける。

 言ったあとに気づいた。どうしてあの少女は僕と彼女の名前を知っていたんだろう?


「うそ……うそ……うそ……」

 クラサワさんが口元を両手で押さえる。涙が二つの瞳から溢れる。


 スキ

 彼女が小さく呟く。

 ……スキ

 もう一度、彼女が小さく呟く。

 解放された、と思った。

 今まで自分を縛り付けてきた見せない鎖が音もなく割れた。
 それは思ったよりも脆いものだった。解き放たれたとき初めて気がついた。
 その鎖は邪悪なものではなかった。とてもキレイなものだった。
 失われた時、一瞬だけ悲しくなった。
 僕の中で何かが終わって、始まったのだ。


「あたしも好き。 すごく好き。
 カナザワくんのことがすごく好き。
 ごめんなさい……。

 カナザワくんのことが……大好き」


 その時、車道を大型の黒塗りのセダンが走りぬける。
 どうやら学校のほうへ向かったらしい。


「キスして……おねがい」

 彼女がそういう。


 僕は黙って唇を突き出した。


 思わず目を閉じてしまった。
 そのことに気づいたときには、僕の唇は別の柔らかいもので覆われていた。


 その後も何度も何度も、僕たちはキスをした。


テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/04/23(水) 00:03:11|
  2. 小説
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図書室にて #9

■9■

 今週の金曜日にクラサワさんはこの学校からいなくなってしまう。

 一週間は瞬く間に過ぎていった。

 あのショートカットの少女は図書室には現れない。

 昼休みにクラサワさんと一緒に本を読み、放課後にクラサワさんと一緒に本を読んで、そんなことを忘れていたら、いつの間にか金曜日が来てしまった。

 嘘だ。
 ……忘れてなんかいなかった。一時も。

 でもどうすればいいのかわからない。


 ニ ゲ ラ レ ナ イ 。


 何から? 一体何から逃げられないのだ?
 僕とクラサワさんは「図書室の女の子に片思いの男子中学生」と「その男子中学生を応援する先輩女子中学生」という関係で最初からここまで来た。その関係から外れることはマズイと思う。何がマズイって? いや、だって……他人が期待しているキャラから外れるってその人を裏切るみたいじゃないか。


 そして金曜日の放課後。
 図書室使用許可時間は5時。

 それまで僕と、彼女はそこにいる。時間が過ぎれば彼女は消える。
 終わりが想像できなった。でも、終わりは確実にやってくる。


 僕はどうしたらいいんだろう。


 カーテン越しに夕日が室内にうっすらと差し込んでくる。


 そのとき図書室出入り口ドアがひらいた。
 入ってきたのはあのショートカットの女子生徒。

 彼女は僕とクラサワさんの方をちらりと見た後に、
 本棚から一冊本を取り出すといつもの席へと向かう。


 放課後に彼女が来た事はなかった。
 どうして、今日、来たんだろ?


「来たみたいね」

「……」

「それじゃ、告白してきなさい。
 ……あたしは時間だから」

 僕は時計を見る。まだ終了時間まで1時間もあるじゃないか。

「じゃ……がんばって」

 クラサワさんは慌てて鞄をもつと、そのまま早足で図書室から出て行った。

 閉じられるドア。
 廊下を室内履きで走る音。

 僕はドアから外へ出るクラサワさんの後姿を何度も何度も心のなかでリピートした。


 ニ ゲ ラ レ ナ イ 。


 もう自分には何もすることがない。
 ない。ない。ない。

 なにもできず机に伏せる僕。



「追いかけないの?」



 誰の声? 聞いた事のない声。

 顔を上げる。

 そこにいたのはあのショートカットの少女。
 腕組みをして僕を見下ろすように立っている。


「追いかけないの?
 早く追いかけなさいよ。
 そして伝えなさいよ。
 金澤慎二は倉沢美希がスキだって」


 ええ?

「早く、早く行かないと
 取り返しの付かない事になっちゃう」


 えええ?


「早く!」


 僕はその少女に引っ張られるように席から立たせられると、そのまま彼女は僕の背中をぐいぐいと図書室の入り口に向かって押し出しいく。


「走る!」

「は、はい」


 僕はそういわれて廊下を走り出す。
 もう頭のなかが「???」でいっぱいだ。
 何がなんだかわからない。


テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/04/23(水) 00:01:17|
  2. 小説
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図書室にて #8

■8■


 次の週の月曜日の昼休み。
 僕は図書室の席に座っていた。ここは先週までクラサワさんが座っていた席だ。
 図書室に来てなにも読まないというのも何だから、とりあえずはシャーロック・ホームズでも読んで見る。ホームズよ、お前絶対モテないと思う。

「あの子は来てないんだね」

 その呟くような言葉のあと、自然に僕の隣の席にすわる。
 僕の心臓が高鳴る。クラサワさんだ。

「うん。ここ一週間、ずっと」

 僕は視線を合わせずに答える。

「……まだ声をかけてないんだ」

 彼女の髪がゆれる音が聞こえる。

「いないからね」

 クールに答えたつもり。

「いたら声をかける?」

 戸惑う。前は即答したはずなのに。

「……わからない」

 そう答えたとき、クラサワさんの息を呑んだ。
 何かの言葉を口の中で押しとどめているよう。

「声をかけなさい。そう思って図書室にいるんでしょ?」

 怒ってる。うん、完璧クラサワさんは怒っている。

「……うん」

 だからこう答えるしかないじゃないか。

「じゃ、放課後も図書室に来る事。ひょっとしたら彼女くるかもしれないから」

「え?」

 聞き間違えたかと思って、僕はクラサワさんの方を向く。


「しょーがないからわたしも付き合ってあげる」

 彼女は僕に視線を合わせていなかった。
 図書室の窓のさらにその遠くを見ていた。

 空は青かった。


「うん……」



テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/04/22(火) 23:58:56|
  2. 小説
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