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蒼の教室 #4

■4■

「花子さん……」
「先生がああ言った以上、あなたにあげることはできません」


 目も合わさずにそう言われた。

 ちょっと。その態度何?


「大溪さん、その話は終わったはずです」

 キツイ壇上からの先生の声。

 ちょっとちょっと。
 何?何?何?


 どーん。


 校舎の外から花火を打ち上げたような音がした。


 ―――イキテイルヒトハイマスカ?


「先生、
 あたしは『輪』も『羽』も欲しいです」


 あたしは手を挙げてそう発言した。
 とたんにざわつく教室内のクラスメイト。

 この反応は意外だった。


「ダメです」


 黒板のほうを向いたままの先生。


「どうして?」


 クラスメイトのざわつきは止まらない。


「あなたは何もしらないからです」


「『輪』と『羽』。
 ただそれだけのものでしょ?」


「それだけのものではありません」


 どーん。


 また、校舎の外から花火を打ち上げたような音がした。
 さっきと同じ音?


「じゃ、なんなんですか? 『輪』と『羽』は?

 あたしは『輪』と『羽』が欲しいですっ!」


 ―――そう言ったとき、身体が急に固まった。
 足ががたがたと震えている。まるで自分の身体ではないみたい。
 この感覚は怯え? あたしの身体が猛烈に拒否している。
 脳が猛烈な勢いで空白エリアを拡大させている。


「!……大丈夫ですか? 大溪さん」


 足が震えている。
 あたしは『輪』と『羽』が欲しいと思った。
 でもあたしの身体はそれを拒否している?



「―――先生。

 もう授業は終わりにしましょう」



 1人の男子生徒(輪と羽を装着済み)が立ち上がってそう言った。
 おいおい、どんな自由な授業だ。


「……もう少し、と思ったが、
 もう潮時か……」


 先生は拒否しない。その視線を窓の外に向ける。


 窓には空が映っていた。
 あたしは初めて気づいた。



 窓には

 「蒼い空」しか

 映っていない。



 !?


 おかしい。
 いつもなら窓の外には、グラウンドが、街の風景が、地上が、映っているはずなのに。



 何故、蒼い空だけ?



 ―――イキテイルヒトハイマスカ?


 また、聞こえた。
 遠くからの呼びかけの声。
 どこから聞こえてくるんだろう?


「大溪さん、その『声』に返事をしなさい。

 返事をすることであなたは『他人』となることができる。

 ハイ、でも、oui、でも、かまわない。
 返事をしなさい。」


 先生は窓の方を向いたままそう言った。


 嫌な予感がする。

 窓の外に広がるあり得ない風景。
 シリアスな先生の表情。
 遠くから聞こえる得たいの知らない声。


 この状況に中で返すことばはただ一つ。
 自然に出てくる言葉はただ一つ。


「『嫌』!」


 拒否の「返事」だけ。

 言った瞬間、先生は笑顔のの表情を向けた。


 教室の天井がばりばりと砕け散った。

 その破片はさらに細かくなり四散し消え去る。
 頭上に広がる蒼い空に消え去る。


 あたしは気づいた。

 拒否の言葉も「呼びかけ」への「返事」だということに。
 その不条理さに卑怯だと思った。

 何に対して? 
 なにもかもの背後にあるもの対して、だ。

 だけど、もう止められない。
 あたしは決めてしまった。決めようとは思わなかったのに。

 空が、蒼い空が、ひろがっていく。


 視線を頭上から周りに落としてみると、
 すでに教室を取り囲んでいた壁や窓は消えていた。


「わっ」

 身体のバランスが崩れる。背中側が急に重くなった。
 視線が宙を舞う。また、蒼い空。
 後ろに倒れる。派手に尻餅をつく。

「何……?」

 あたしが座っていた椅子が無くなっていた。
 そして机も消えている。


 クラスメイトたちは全員立っていた。
 それぞれの光輪を輝かせ、白い翼を大きく広げて。


 あたしの隣にいたはずの転校生の姿を見つけることはできなかった。


「それでは、今日はここまで。

 ―――みなさん、良い未来を」


 先生がパタンと出席簿を閉じる。
 背後の黒板がすっと消えた。


 羽を広げて先生は飛び立つ。
 それに続いてクラスメイトたちも順々に空へ向かって飛び立つ。

 ―――飛び立てないのは、羽をもたないあたしだけ。


 待って。

 待って、待って、待って。


 空に手を伸ばす。

 何も届かない。
 何も掴めない。
 何も意味がない。


 先生とクラスメイトは蒼い空の中に消えていってしまって―――あたしはただ独り、ここに残される。


 叫ぶ。
 意味不明の言葉を叫ぶ、
 まるで生まれたての赤子が発する鳴き声のように。

 身体がどうなろうと知りはしなかった。
 ただ叫んだ。


 そして叫びつかれて咳き込んだときに、それまで残っていた床が崩れた。

 
 墜ちる。 

 あたしは墜ちる。

 重力セカイの住人らしく、墜ちる。


 より深き蒼のセカイへ、墜ちていく―――。

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テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/05/11(日) 14:41:14|
  2. 小説
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