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蒼の教室 #2

■2■


「わっ」

 地面にぶつかる!と思ったわたしは急に身体を引き押した。
 それは本能の行動。止められない。


「大溪ぃ、寝てたなー」


 先生の声。
 黒板に書き込まれたチョークの文字。
 生徒机に上に置かれた真っ白なノート、その側に転がっているシャーペン
 わたしの四方を囲む夏服姿の生徒達。


「ええっ……」


 ノートにはよだれのシミが。


「……スミマセン」


 あたしが小さな声で謝ると、周りからくすくすという笑い声が。
 やだなー、また、寝てたんだー。自分の短い髪を掻き上げる。焦った時のわたしの癖。


「前の時間の事で疲れているのはわかるがぁー、
 周りもみんな同じだからなぁー。もうちょっと、気を引き締めろよぉー」

 と先生はひょこひょこと背中の羽を揺らしながら、呆れたように言った。
 わたしは顔を真っ赤にしたますます小さくなる。


 ……羽?


 何か一瞬だけ見慣れないモノが先生の背中に付いていたような気がする。
 そしておずおずと下に向けていた視線を上げて先生を見た。
 羽じゃない、輪っかだ。頭のすぐ上を輪っかが浮いている。見間違いだった。やれやれ。


 ……輪っか?


 いやー、あれー?

 あれー?
 あれー?
 あれー?

 なになになになに。どうしたのいったい先生。そんな格好が似合うような時期でもないし年でもないし顔でもない。いったいどうなってしまったんだ、教員というものはストレスがたまりやすい職業だとは聞いていたけど、それが実際目の前でえげつないものとなって現れるとどうしたらいいか判らなくなってしまう。こういうのを思考停止というのだろう。
 どうしたらいいか判らなくなっているのはあたしではなないらしい。周りの生徒達もこの哀れな先生については普段どおり接している。そうだ、それが答えだ。おかしなものなんて見ないふりをすればそれは存在しないと同じだ。

 あたしはこの賢明なる「頭上に輪っか」と「背中に羽」をを生やしたクラスメイト達を見習わなければならない!


 ……。
 …………。
 ………………。

 ……ううっ、なんなのよー。


 凹んだ。いや、もう、これは凹むしかない。
 おかしいのは先生だけじゃない。クラスメイトまでおかしくなっている。そりゃなんだかんだと言って高校生というものはストレスがたまりやすい時期だとは聞いていたけど、それが実際目の前でえげつないものとなって現れるとどうしたらいいか判らなくなってしまう。こういうのを思考停止というのだろう。
 どうしたらいいか判らなくなっているのはあたしだけらしい。周りの生徒達もこの哀れな生徒については普段どおり接している。やっぱり、それが答え? おかしなものは自分もおかしくなればそれは存在しないと同じだ。


 ……凹んだ。自分の思考の欺瞞に凹んだ。


 あたしはしばらく夏服制服に羽を生やし、頭上に輝く輪っかをのせているクラスメイトたちを見ていた。白色の夏服と白い羽というのは案外合うもんだな、と思いながらも自分の記憶の奥からこのセカイの常識ってやつを引っ張り出してくる。

 大丈夫。この状況は「常識」テンプレートからは外れている。
 この場は「非常識」に分類される。うんうんうん。

 そこまで考えた後、あたしははっとして恐る恐る頭の上と背中を手で触れてみた。なにも特殊な異物はついていない。どうやらあたしには頭の上の輪っかも、背中の羽もないみたいだ。……良かった。


 ……良かった?
 いやまて、あたしが「普通」ということは、この中では「異常」ということではないのか。そう考えると急に身体が硬くなる。あたしは他の人にどんな風に思われているのだろう。こんなヴィジュアル的に明白な違いがある以上、普通には思われないだろう。


 うわっ。これはキツイ。


「あーっ。突然だが転校生を紹介する」


 授業の途中で先生がなんの前触れもなくそう言った。
 先ほどまでチョークの文字が踊っていた黒板が、いつのまにかキレイさっぱり消されていた。

 でもあたしはそれどころじゃない。
 この授業はいつか終わる。いまは授業中の生徒達だが、その時間が終わったときどうなるか? 想像するだけでも、怖い。そんな事ばかり考えている。


「こんにちは。花子です」


 黒板の前には冬服の制服をきた白い肌が印象的な金髪美少女が立っていた。
 その後ろの黒板には縦書きで「花子」と書かれていた。

 いつの間に教室にはいってきたのか?……あたしが気づかないうちに入ってきたのだろう。なぜ冬服を着ているのか?……転校生であるからまだこの学校に不慣れだからだろう。なぜ金髪美少女が花子というジャパニーズな名前なのか?……ふざけた名前をつける親はどこにでもいる。だいたい、花子を訳してフラワー・チルドレンとしたら陽気な古代西海岸風のテイスト満載ではないか。

 気にしちゃダメだ。
 気にしちゃダメだ。
 気にしちゃダメだ。

 あたしはそれどころじゃないのだ。


「あーっ、花子さんの席は……大溪の隣だな。ちょうど空いているし」


 えっ、と思ってあたしは右隣の席をみる。
 空いていた。今まで気づかなかったけど。
 でも考えてみればずっと空いていたような気がする。


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テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/05/11(日) 14:39:15|
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