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図書室にて #10

■10■

 校門から暫くいくと、歩道を歩いているクラサワさんの姿を見つけることができた。
 夕方のオレンジ色の光の中、一人ぼっちで最後の帰り道を歩くその姿は何か物悲しかった。

 僕は走る。彼女の追いつくために。


「クラサワさん!」

 思ったよりも大きな声が出た。
 彼女は立ち止まり、驚いた様子でこちらに身体を向けた。
 走り寄る僕。そして気づく。彼女の目が涙で真っ赤になっていることを。
 クラサワさんはそれを誤魔化すようにに手でニ、三回目をこする。


「カナザワくん……どうしたの?」

「好きだ」

 言ってしまった。自分が選択できる台詞はこれしかなかったんだ。


 ニ ゲ ラ レ ナ イ 。


 そうだ、逃げられない。僕は彼女にこの言葉を言う事から逃げられない。

「金澤慎二は倉沢美希がスキだ」

 あの名も知らないショートカットの少女から告げられた言葉を、ほぼそのまま目の前の大好きな彼女に投げかける。

 言ったあとに気づいた。どうしてあの少女は僕と彼女の名前を知っていたんだろう?


「うそ……うそ……うそ……」

 クラサワさんが口元を両手で押さえる。涙が二つの瞳から溢れる。


 スキ

 彼女が小さく呟く。

 ……スキ

 もう一度、彼女が小さく呟く。

 解放された、と思った。

 今まで自分を縛り付けてきた見せない鎖が音もなく割れた。
 それは思ったよりも脆いものだった。解き放たれたとき初めて気がついた。
 その鎖は邪悪なものではなかった。とてもキレイなものだった。
 失われた時、一瞬だけ悲しくなった。
 僕の中で何かが終わって、始まったのだ。


「あたしも好き。 すごく好き。
 カナザワくんのことがすごく好き。
 ごめんなさい……。

 カナザワくんのことが……大好き」


 その時、車道を大型の黒塗りのセダンが走りぬける。
 どうやら学校のほうへ向かったらしい。


「キスして……おねがい」

 彼女がそういう。


 僕は黙って唇を突き出した。


 思わず目を閉じてしまった。
 そのことに気づいたときには、僕の唇は別の柔らかいもので覆われていた。


 その後も何度も何度も、僕たちはキスをした。


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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/04/23(水) 00:03:11|
  2. 小説
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