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図書室にて #7

■7■

 その日の放課後、僕は生徒玄関から外にでた。
 もう雨は降っていなかった。ブルーマンデー、崩壊。

「よお♪」

 急に背中にずっしりと重みがかかる。
 甘い薫り。聞き慣れた声。

「な、な、何をするんですか!」

 ばっとそれを振り払い身体全体で振り返る。
 後ろから抱きついてきたのはクラサワさんだった。

「うわはっ。かーわーいーいー。
 もっとぎゅっぎゅっとしてあげれば良かった」

 身体全体をくねくねさせてるクラサワ痴女。
 そこで気づく。さっき肩よりちょっと下に当たっていた柔らかいもの正体を。
 身体をくねくねさせているからその揺れにどうしても目がいってしまう。

「うわっ。真っ赤になっている。
 かーわーいーいー。かーわーいーいー」

 おいそこの痴女。
 僕が真っ赤(自分じゃわからないけど)になっているのはウブなせいじゃない。
 おまえの破廉恥な行為が自分の倫理許容レベルを超えたからだ。人間として恥ずかしいじゃないか。

「一緒に帰ろ。
 住んでいるマンション、同じ方向だから」



 ぺったら、ぺったらと二人で夕暮れの住宅街を歩く。
 時代から取り残されてほとんど趣味でやっているような店がぽつりぽつりとある商店街。入り口アーチがなかったら商店街だなんて普通の人は思わないだろう。
 他に人がいない歩道を歩く。車道にも車は滅多に通らない。

「……金沢ってどんなところですか?」

「金沢城、香林坊、兼六園、雪……それくらいしか知らない。
 遠いからあんまり行ったことないなー。母親はちょくちょく帰っていたようだけど」

「ここからだと石川県は飛行機で行くんですか?」

「うん。陸路でも行けるけどねー。あーそうだ、金沢のことを思うとコマツっていう言葉も思い浮かべちゃう。空港が小松にあるのね」

「小松空港って民間と自衛隊で滑走路を共用しているんですよね。
 冷戦時代なんか―――」

 そこで言葉を切った。自分はなんちゅう話をおっぱじめようとしたんだ?
 普通の人はそんなことに興味はないじゃないか。

「ふふふっ……。
 それでカナザワくん。あの子に声をかけたらなにするの?」

「えっ……、そりゃ、まずは、仲良くなろうかと……」

「だぁもう、ダメダメ。
 そんな下心で友達ごっこをしたって、女の子すぐに気づいちゃうって」

「そんなこと言ったって、
 いきなり『好きだー!』っていうのも無しでしょ?」

「それはさすがに身の危険を感じるかな……?」

「そうでしょ?」

「あーもう。
 気づいたらいつも隣にいる、っていう感じになれば……」

「それが簡単にできりゃ苦労しませんよ。
 もう、運命とかそういう偶然の積み重ねに賭けるしか」

「うあー、わかった。
 カナザワくんはその子といろいろ偶然が重なって、いつも隣にいる、という感じになったとして、さて、それからどうする?」

「どうするったって、いやもうそこから先は……」

 脳内に広がるめくるめく童貞少年妄想世界大パノラマ。性欲がロケット加速。

「まずはキスよね」

 パノラマが一瞬にしてしぼむ。
 なんか急にハードボイルドな現実に連れ戻された気分。

「……そーですよねー」

 がっくりと肩を落とす僕。
 いや、都合の良い妄想の果ての失望なのだから、自業自得といえばその通りだ。


「練習してみる?
 あたしと」


 はい?

 耳を疑った。普段あんまり―――いや、まったく―――聞かない台詞だったからだ。

 クラサワさんは足を止めた。僕も足をとめた。
 目が合った。やっぱりクラサワさん背が高いや……。
 夕日を背にしていたため、逆光気味で彼女の表情が判らない。


 すっと彼女は唇を僕に近づけてきた。

 動けない。
 思わず目をつぶる。


 息が近くなる。


「目を閉じてたら
 ……練習にならないでしょ?」


 そういわれて今度はかっと目を見開く。
 極端だな、と自分でも思った。


 そこにあるのは、にははっという笑顔のクラサワさん。


「今度はするときは目を閉じない事」

 そう言って彼女はまた歩き出す。
 キスは無しだった。からかわれていたのかな?



 次の日から週末まで、図書室にあのショートカットの女の子が現れることはなかった。
 クラサワさんも姿をみせなかった。


 正直、ほっとした。


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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/04/22(火) 23:56:41|
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