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図書室にて #3

■3■

 次の日の昼休みの図書室。
 あの女の子がいなかった。

「よっ。 微熱少年」

 代わりにあのデカイ女が独りで長机に肘をつき本を読んでいた。
 調子の良いときにくじ引きで外れを引いた気分、というのはこんな感じなんだろう。
 自分でも何言っているのかよくわからないけど。

「あの……」
「まだ来てないよ」

 もしやと思って確認したけど、やっぱり彼女はいないようだ。
 仕方なしの僕はそのデカイ女の前の席にに座った。

「倉沢。 2-Cの倉沢」
「は?」
「あたしの名前。知っておいて損はないでしょ?」
「……」

 コンビニでもらうレシート程度のご利益はあるかもな。

「あんたの名前は?」
「……カナザワ」
「カナザワ? 石川の?」

 一瞬このデカイ女―――ここは紳士らしく名前を呼ぼう―――クラサワさんが何を言っているかわからなかった。しばらく考えて、その質問が意図するところがわかった。

「キンのほうは合っているけど、サワは違う。細かいほう」
「あー、そっちか」

 いい加減な説明だけど、通じたらしい。


 その時、図書室の出入り口の扉が開いた。
 自然とそちらに目がいく。


 昨日の、一昨日の少女だ。


 靴紐を見る。同じ色だ。ということは1年生か。

「あ」

 クラサワさんのその小さな声を聞いた瞬間、心臓がドキドキし始めた。
 なんだか身体が固まって椅子に貼り付けられたようだ。身動きが取れない。

 少女はとたたたっと少し早足で僕とクラサワさんの前を通り過ぎると、そのまま幾列も並べられた本棚の奥へと消えていった。そしてしばらくすると、そのまま早足で図書室の出入り口まで行き、そのまま廊下へと出て行った。

 開いて、そして閉じてしまった出入り口ドア。
 僕はそれをじっと見ている。

「追いかけないの?」

 クラサワからの一撃。残酷な一言。どうしようかどうしようかと戸惑う自由を一瞬にして奪ってしまう必殺の一言。

「……今日は、いい」

 言ってしまってしまったと思う。こういう情けない態度にはきっとクラサワ女史から本の一撃がもたらされるだろう。

「ふーん」

 何も起こらなかった。
 ぺらりと本をめくる音。昨日の少女とは違って、まるで噛みしめるかのようなその音。

「ところでさ」
「え?」
「本、読まないの?」



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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/04/22(火) 23:46:22|
  2. 小説
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