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図書室にて #2

■2■

 これは恋だ。
 放課後、学校から塾に向かう途中で僕は確信した。
 ぐっと握りしめる右手。

 やっぱりこれは恋だ。
 家に帰りお風呂に向かう途中で再び確信した。

 これは恋か?
 ベットに入りちょっと疑問に思った。

 恋……。
 夢の中で再確認した。


 次の日の昼休み、僕は図書室に直行した。

 いた。
 昨日の彼女が同じ席で本を読んでいる。
 もう記憶のなかで何回リピート再生したかわからないその柔らかそうな髪の毛。
 もう記憶のなかで何度触ったかもわからないその白い指先。おっとこういう時は妄想というほうが正しいのか。

 その指先でぺらり、ぺらりとページをめくっている。ちょっと速いペースだ。
 ……頭が良いんだな。きっと。

 うんうんうんうんうんうんうんうん。彼女の情報一つ、ゲットだな。

 ……どすっ。

「ぐへっ」

 何かが頭の上から落ちてきた。

「あ、ゴメン」

 昨日も同じようなことあったな。
 頭をさすりながら室内履きのヒモの色を見る。オレンジ。2年生だ。
 うん、ここまでは昨日と同じ。

「うわっ。昨日の」

 その後の台詞が違った。ちょっと酷い方向に違った。
 その背の高い女子生徒は昨日と同じく本を両手で持っている。何十冊も高く重ねて。
 その内の一冊が僕の頭に落ちてきたのだ。じ、辞書だとぉ?

「本も読まず立っているなんで何してるの?
 ここ図書室なんだし。先生に怒られちゃうよぉー」

 重ねた本を近くの書見机に置きながら彼女は言う。
 たかが一年しか生まれ年が違わないはずなのに、この圧倒的な威圧感はなんなんだ。
 これが生徒を不幸にすると言う中学校というシステムなのか?ごめん自分でも何言っているかよくわからない。

「……すみません」

 とりあえず謝った。
 その表紙に制服の名札を見た。倉沢か。

「あの女の子のこと見ていたの?」
「えっ……」
「かわいーよね。人形みたい」

 どうやら僕の視線を推測したらしい。

「……」

 ちょっと嫌な気分。

「『深淵を覗くならば』」

 屈んで、ちょっと声を低めて彼女が僕の耳元で囁く。
 髪が僕のうなじに当たった。こそばやい。

「『深淵も同じくおまえを見返すだろう』」

「え?」

「ニーチェ」

 広がる長い髪を背景にその2年生女子はにっこりと笑う。

「……知ってる」

 確か台所用洗剤の名前だ。

「へぇ。そーいえばそーいうの好きそうな顔だわ」

 目を大きく見開いて彼女は言う。
 こうしてみるとやっぱりデカイな、この女。
 僕が平均よりも背が小さく、彼女が平均よりも背が大きいからか?

「……あの子、いつもここにいるの?」

「は?」

「いやだからさ。あんた図書委員なんだろ?
 だったらあの女の子がいつもいるのか?とか、
 いやそれよりもあの女の子の名前とか知らないの?」

 ふぅーとその女は呆れた表情で息を吐く。

「先輩」

 その女はちょいちょいと指先で己を指した。はいはいそうですか。

「あなた様は噂に名高い図書委員とお見受けしましたが、少しお尋ねしたいことがございます。あそこにいらっしゃる麗しき姫はいつもあの席においでになるのでしょうか?もしくあの方のお名前はご存じでしょうか候」

「ふざけてんの?」

 ちっ。

「すみません。少し聞きたいんですが、
 あそこの席に座っている女の子はいつもあの席に座っているのでしょうか?
 もしご存じならお名前も教えていただきたいのですが」

 うむうむ、と満足そうにうなずくデカイ女。

「あたし、ストーカーの手伝いなんかしたくないなー」

「だれがストーカー……!」

「うるさい」

 ずん。

 痛い。というか首にきた。
 この背の高い横暴な2年生女子(名札名:倉沢)は何か重い大型本を俺の頭から振り落としたのだ。

「……げ、『現代用語の基礎知識』
 それも微妙に古いもの……」

「古いから、こうして奥の倉庫に移動させるんでしょうが」

 どすっと書見机にに置かれている本の上に重ねる。これ結構重くね?

「いや、そうじゃなくて……」

 首をさすりながらそう言う。なにかヤバイ女子に当たったのかなぁ。

「……しらない」

「は?」

「だから、知・ら・な・い。
 あたしも図書室に毎日来るようになったのも最近だし、
 あの子がどこの誰なのか―――まぁ制服を見る限りうちの生徒だと思うけど―――まったく知らない」

「そっか……」

 ダメか。あんまり期待はしていなかったけど。
 どうしよう。このまま見ているしかないのかな?
 テレパスかなんかで僕の意志が彼女に届けば……ダメだ。いきなりテレパスで僕の意志を伝えても見ず知らずの他人からの発信(それもなんか血走っているもの)なんて迷惑メールとして捨てられるのがオチだ。ベイズ理論でポイだ。

「でも綺麗でかわいいー子ねー、
 何年生なんだろ?」

 うっとりという表情でデカイ女は図書室の少女を見つめる。
 えー……これって……。

「あー、あー。変なこと考えてる。
 単に感想を言っただけじゃない。あたし女の子が好きって訳じゃないよー」

「……ならいいけど」

 顔をぶんぶんと横に振る2年女子をため息とともに視界から追い出すと、僕はもう一度彼女のほうを見る。

 見てた?

 気のせいか、一瞬だけあのショートカットの女の子と目があったような気がした。
 気のせいなのか。彼女がページをめくる手が止まっている。

 よし。

 こ、声をかけてみる?


 脳内に「・声をかけてみる」「・そのままじっとみてる」という選択肢が現れた。脳内カーソルが前後左右斜めにゆらゆら揺れる。どぉーしよーぉかな。?


 ずっという椅子がカーペット床をこする音がした。
 いままで本をよんでいた彼女が席を立ったのだ。

 そして本棚のほうへすたすたと早足でいき本を戻し、おなじくすたすたと早足で図書室から出て行った。



 えーっ。


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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/04/22(火) 23:42:28|
  2. 小説
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