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図書室にて #11

■11■

 校舎前に黒塗りのセダンが止まる。
 そこへ1人の女子生徒―――図書室のあのショートカットの少女だ―――乗り込んだ。
 後部座席のドアが閉じられたあと、車は静かに発進する。


 その車は歩道でキスをしている二人の傍を通り過ぎる。


「キスしてた」

 後部座席の少女はそう呟く。

「二人ともわかーい」

「あなたと同じ年だから、ね」

 運転席で車のハンドルを握る少し厚めの化粧をした女性はそう返す。

「お母さん、あれ本当におじーちゃんと、おばーちゃんなの?」

「そうよ」

「でも、なんかおじーちゃん、あたしの知っているよりも何だか情けなかったー。
 それにおばあちゃんは昔から背が大きかったんだねー」

「大人になるといろいろと変わるのよ」

「あの後、おじーちゃんとおばーちゃんは、
 長距離をずっとメールでやり取りするんだよね?」

「メールのやり取りは、暫くしたら途絶えるようになっちゃたんだって」

「えー」

「移動手段を持たない中学生の遠距離恋愛なんてそんなもの。
 で、お互いがそれぞれの存在を薄っすらと忘れてきたころに、
 ……大学で再会するのよ」

「運命だー」

「うん、運命。
 その偶然の出会いで、お互いがとても運命的なものを感じて―――それから結婚までほぼ一直線というわけ。
 ……母さんね、この話を小さい頃からずっと聞かされてきたの。
 それで、なにか……幻想もっちゃったのかな? 結婚とかに」

「あたし、お母さんについていくよ」

「……ゴメンネ。
 お母さんとお父さん、仲が悪くなっちゃって……。

 でもね、あなたには希望を持って欲しいの。
 お父さんとお母さんだけを見て、結婚と恋愛に変な斜めの見方をしてほしくないの。
 わたし達の結婚は不幸だったけど、幸せな恋愛と結婚をした人たちもいるの。

 ……お爺ちゃんやお婆ちゃんみたいにね」

「うん」

「本当に幸せな恋愛があるんだって見せたくて、
 あの人に頭下げてこのタイムマシンを借りたんだから……」

「……うん」

「じゃ、帰りましょう。未来へ。
 わたしたちの『今』へ」


 道路を走る黒色のセダンが人気のない道から消えたのは、それから暫く後のことだった。


 END
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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/04/23(水) 00:05:08|
  2. 小説
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図書室にて #10

■10■

 校門から暫くいくと、歩道を歩いているクラサワさんの姿を見つけることができた。
 夕方のオレンジ色の光の中、一人ぼっちで最後の帰り道を歩くその姿は何か物悲しかった。

 僕は走る。彼女の追いつくために。


「クラサワさん!」

 思ったよりも大きな声が出た。
 彼女は立ち止まり、驚いた様子でこちらに身体を向けた。
 走り寄る僕。そして気づく。彼女の目が涙で真っ赤になっていることを。
 クラサワさんはそれを誤魔化すようにに手でニ、三回目をこする。


「カナザワくん……どうしたの?」

「好きだ」

 言ってしまった。自分が選択できる台詞はこれしかなかったんだ。


 ニ ゲ ラ レ ナ イ 。


 そうだ、逃げられない。僕は彼女にこの言葉を言う事から逃げられない。

「金澤慎二は倉沢美希がスキだ」

 あの名も知らないショートカットの少女から告げられた言葉を、ほぼそのまま目の前の大好きな彼女に投げかける。

 言ったあとに気づいた。どうしてあの少女は僕と彼女の名前を知っていたんだろう?


「うそ……うそ……うそ……」

 クラサワさんが口元を両手で押さえる。涙が二つの瞳から溢れる。


 スキ

 彼女が小さく呟く。

 ……スキ

 もう一度、彼女が小さく呟く。

 解放された、と思った。

 今まで自分を縛り付けてきた見せない鎖が音もなく割れた。
 それは思ったよりも脆いものだった。解き放たれたとき初めて気がついた。
 その鎖は邪悪なものではなかった。とてもキレイなものだった。
 失われた時、一瞬だけ悲しくなった。
 僕の中で何かが終わって、始まったのだ。


「あたしも好き。 すごく好き。
 カナザワくんのことがすごく好き。
 ごめんなさい……。

 カナザワくんのことが……大好き」


 その時、車道を大型の黒塗りのセダンが走りぬける。
 どうやら学校のほうへ向かったらしい。


「キスして……おねがい」

 彼女がそういう。


 僕は黙って唇を突き出した。


 思わず目を閉じてしまった。
 そのことに気づいたときには、僕の唇は別の柔らかいもので覆われていた。


 その後も何度も何度も、僕たちはキスをした。


テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/04/23(水) 00:03:11|
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図書室にて #9

■9■

 今週の金曜日にクラサワさんはこの学校からいなくなってしまう。

 一週間は瞬く間に過ぎていった。

 あのショートカットの少女は図書室には現れない。

 昼休みにクラサワさんと一緒に本を読み、放課後にクラサワさんと一緒に本を読んで、そんなことを忘れていたら、いつの間にか金曜日が来てしまった。

 嘘だ。
 ……忘れてなんかいなかった。一時も。

 でもどうすればいいのかわからない。


 ニ ゲ ラ レ ナ イ 。


 何から? 一体何から逃げられないのだ?
 僕とクラサワさんは「図書室の女の子に片思いの男子中学生」と「その男子中学生を応援する先輩女子中学生」という関係で最初からここまで来た。その関係から外れることはマズイと思う。何がマズイって? いや、だって……他人が期待しているキャラから外れるってその人を裏切るみたいじゃないか。


 そして金曜日の放課後。
 図書室使用許可時間は5時。

 それまで僕と、彼女はそこにいる。時間が過ぎれば彼女は消える。
 終わりが想像できなった。でも、終わりは確実にやってくる。


 僕はどうしたらいいんだろう。


 カーテン越しに夕日が室内にうっすらと差し込んでくる。


 そのとき図書室出入り口ドアがひらいた。
 入ってきたのはあのショートカットの女子生徒。

 彼女は僕とクラサワさんの方をちらりと見た後に、
 本棚から一冊本を取り出すといつもの席へと向かう。


 放課後に彼女が来た事はなかった。
 どうして、今日、来たんだろ?


「来たみたいね」

「……」

「それじゃ、告白してきなさい。
 ……あたしは時間だから」

 僕は時計を見る。まだ終了時間まで1時間もあるじゃないか。

「じゃ……がんばって」

 クラサワさんは慌てて鞄をもつと、そのまま早足で図書室から出て行った。

 閉じられるドア。
 廊下を室内履きで走る音。

 僕はドアから外へ出るクラサワさんの後姿を何度も何度も心のなかでリピートした。


 ニ ゲ ラ レ ナ イ 。


 もう自分には何もすることがない。
 ない。ない。ない。

 なにもできず机に伏せる僕。



「追いかけないの?」



 誰の声? 聞いた事のない声。

 顔を上げる。

 そこにいたのはあのショートカットの少女。
 腕組みをして僕を見下ろすように立っている。


「追いかけないの?
 早く追いかけなさいよ。
 そして伝えなさいよ。
 金澤慎二は倉沢美希がスキだって」


 ええ?

「早く、早く行かないと
 取り返しの付かない事になっちゃう」


 えええ?


「早く!」


 僕はその少女に引っ張られるように席から立たせられると、そのまま彼女は僕の背中をぐいぐいと図書室の入り口に向かって押し出しいく。


「走る!」

「は、はい」


 僕はそういわれて廊下を走り出す。
 もう頭のなかが「???」でいっぱいだ。
 何がなんだかわからない。


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  1. 2008/04/23(水) 00:01:17|
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図書室にて #8

■8■


 次の週の月曜日の昼休み。
 僕は図書室の席に座っていた。ここは先週までクラサワさんが座っていた席だ。
 図書室に来てなにも読まないというのも何だから、とりあえずはシャーロック・ホームズでも読んで見る。ホームズよ、お前絶対モテないと思う。

「あの子は来てないんだね」

 その呟くような言葉のあと、自然に僕の隣の席にすわる。
 僕の心臓が高鳴る。クラサワさんだ。

「うん。ここ一週間、ずっと」

 僕は視線を合わせずに答える。

「……まだ声をかけてないんだ」

 彼女の髪がゆれる音が聞こえる。

「いないからね」

 クールに答えたつもり。

「いたら声をかける?」

 戸惑う。前は即答したはずなのに。

「……わからない」

 そう答えたとき、クラサワさんの息を呑んだ。
 何かの言葉を口の中で押しとどめているよう。

「声をかけなさい。そう思って図書室にいるんでしょ?」

 怒ってる。うん、完璧クラサワさんは怒っている。

「……うん」

 だからこう答えるしかないじゃないか。

「じゃ、放課後も図書室に来る事。ひょっとしたら彼女くるかもしれないから」

「え?」

 聞き間違えたかと思って、僕はクラサワさんの方を向く。


「しょーがないからわたしも付き合ってあげる」

 彼女は僕に視線を合わせていなかった。
 図書室の窓のさらにその遠くを見ていた。

 空は青かった。


「うん……」



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  1. 2008/04/22(火) 23:58:56|
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図書室にて #7

■7■

 その日の放課後、僕は生徒玄関から外にでた。
 もう雨は降っていなかった。ブルーマンデー、崩壊。

「よお♪」

 急に背中にずっしりと重みがかかる。
 甘い薫り。聞き慣れた声。

「な、な、何をするんですか!」

 ばっとそれを振り払い身体全体で振り返る。
 後ろから抱きついてきたのはクラサワさんだった。

「うわはっ。かーわーいーいー。
 もっとぎゅっぎゅっとしてあげれば良かった」

 身体全体をくねくねさせてるクラサワ痴女。
 そこで気づく。さっき肩よりちょっと下に当たっていた柔らかいもの正体を。
 身体をくねくねさせているからその揺れにどうしても目がいってしまう。

「うわっ。真っ赤になっている。
 かーわーいーいー。かーわーいーいー」

 おいそこの痴女。
 僕が真っ赤(自分じゃわからないけど)になっているのはウブなせいじゃない。
 おまえの破廉恥な行為が自分の倫理許容レベルを超えたからだ。人間として恥ずかしいじゃないか。

「一緒に帰ろ。
 住んでいるマンション、同じ方向だから」



 ぺったら、ぺったらと二人で夕暮れの住宅街を歩く。
 時代から取り残されてほとんど趣味でやっているような店がぽつりぽつりとある商店街。入り口アーチがなかったら商店街だなんて普通の人は思わないだろう。
 他に人がいない歩道を歩く。車道にも車は滅多に通らない。

「……金沢ってどんなところですか?」

「金沢城、香林坊、兼六園、雪……それくらいしか知らない。
 遠いからあんまり行ったことないなー。母親はちょくちょく帰っていたようだけど」

「ここからだと石川県は飛行機で行くんですか?」

「うん。陸路でも行けるけどねー。あーそうだ、金沢のことを思うとコマツっていう言葉も思い浮かべちゃう。空港が小松にあるのね」

「小松空港って民間と自衛隊で滑走路を共用しているんですよね。
 冷戦時代なんか―――」

 そこで言葉を切った。自分はなんちゅう話をおっぱじめようとしたんだ?
 普通の人はそんなことに興味はないじゃないか。

「ふふふっ……。
 それでカナザワくん。あの子に声をかけたらなにするの?」

「えっ……、そりゃ、まずは、仲良くなろうかと……」

「だぁもう、ダメダメ。
 そんな下心で友達ごっこをしたって、女の子すぐに気づいちゃうって」

「そんなこと言ったって、
 いきなり『好きだー!』っていうのも無しでしょ?」

「それはさすがに身の危険を感じるかな……?」

「そうでしょ?」

「あーもう。
 気づいたらいつも隣にいる、っていう感じになれば……」

「それが簡単にできりゃ苦労しませんよ。
 もう、運命とかそういう偶然の積み重ねに賭けるしか」

「うあー、わかった。
 カナザワくんはその子といろいろ偶然が重なって、いつも隣にいる、という感じになったとして、さて、それからどうする?」

「どうするったって、いやもうそこから先は……」

 脳内に広がるめくるめく童貞少年妄想世界大パノラマ。性欲がロケット加速。

「まずはキスよね」

 パノラマが一瞬にしてしぼむ。
 なんか急にハードボイルドな現実に連れ戻された気分。

「……そーですよねー」

 がっくりと肩を落とす僕。
 いや、都合の良い妄想の果ての失望なのだから、自業自得といえばその通りだ。


「練習してみる?
 あたしと」


 はい?

 耳を疑った。普段あんまり―――いや、まったく―――聞かない台詞だったからだ。

 クラサワさんは足を止めた。僕も足をとめた。
 目が合った。やっぱりクラサワさん背が高いや……。
 夕日を背にしていたため、逆光気味で彼女の表情が判らない。


 すっと彼女は唇を僕に近づけてきた。

 動けない。
 思わず目をつぶる。


 息が近くなる。


「目を閉じてたら
 ……練習にならないでしょ?」


 そういわれて今度はかっと目を見開く。
 極端だな、と自分でも思った。


 そこにあるのは、にははっという笑顔のクラサワさん。


「今度はするときは目を閉じない事」

 そう言って彼女はまた歩き出す。
 キスは無しだった。からかわれていたのかな?



 次の日から週末まで、図書室にあのショートカットの女の子が現れることはなかった。
 クラサワさんも姿をみせなかった。


 正直、ほっとした。


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  1. 2008/04/22(火) 23:56:41|
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図書室にて #6

■6■

 そして開けて月曜日。雨が降っていたからブルーマンデー。いつか使ってみたかった言葉だ。
 昼休みになり、僕は図書室へ向かう。

 あの女の子がいなかった。何故かほっとした。
 クラサワさんがいた。何故か身体が楽になる。マゾに目覚めつつあるのかもしれん。

 今日は彼女は本を読んでいる。いつもの図書室入り口近くの席で。この席にいるから僕はどうしても入り口ドアを開けたときにクラサワさんが目に入ってしまうのだ。別にどうでもいいけど。

「来てないよ」

 まるでなじみの客に挨拶をする店主のような軽い感じで、クラサワさんはそう伝える。

「そうだね」

 あの女の子がいないことはとっくに確認済みだった僕は、彼女の隣の席に座る。
 そして彼女が読んでいる本の題名を見てぎょっとした。

『好き?好き?大好き?』

 なんつー本だ。
 夢見る金髪少女が主人公の英語副読本の日本語訳か?英語授業の訳はちょっと直訳調にしないと先生に直ぐにばれてしまうぜ。

「そうだね? なんか生意気ー」
「今日はクラサワさんに聞きたいことがあるんです」
「あたしに? 何?」

 パタンと本を閉じる。

「休みの前の日に言っていた
 『学校にいられる間』って何ですか?
 気になって仕方がないんです」

 自分でも驚くほどするりとその言葉が口から出た。
 そりゃそうだ。なんどもなんども心の中で練習したんだ。
 でも、そのあまりにもスムーズさに自分でも驚いてしまう。身体と意識が同じ方向にブレもなくシンクロしているという感じだろうか。

「ああ、そのこと?
 言った通りの意味。
 あたしさ、来週で転校するから」

「え?」

「お母さんがさ、離婚しちゃって。
 あたしお母さんと一緒に実家の金沢―――石川県の金沢に、引っ越すの。
 もう荷物とかもほとんど送ってあって……」

 石川県の金沢。ここからじゃ……飛行機か?

「んでまぁ最後じゃない?
 今までいいかげんにしていた図書委員の仕事をしてやるかー、なんて思っちゃって、
 図書の整理なんかを手伝っていたわけ。もっともそんな仕事すぐにおわっちゃったけどねー」

 にはははっとクラサワさんは笑う。
 あれ?なんでこんなにもクラサワさんがかわいく見えるのだろう。調教されてしまったのか?

「だからねー、早く見たいのよ。
 微熱少年が恋の一歩を踏み出す時を。

 学校に来るのは来週の金曜日までだから。
 それまでによろしく頼むよ♪」


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  1. 2008/04/22(火) 23:54:07|
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図書室にて #4 #5

■4■


 次の日の昼休みの図書室。
 あの子が、いた。

 そして知る。
 真剣に本を読んでいる人に声はなんとかけ辛いものかのかを。

「ふふっ」

 かつ、そういう自分を鼻で笑う人がいるということを。
 入り口近くの席に座っているクラサワさんが読んでいる本はえらく薄い。

 『暗黙知の次元』

 ……ホラーか。

「いけないんだ♪」

 イケナインダ。僕、なにか悪いことをしたか。
 ああ……行けないんだ、か。そりゃ、真剣に本を読んでいる人に声をかけるほど僕は無神経で余裕のない人間じゃない。

「ふふっ」

 また笑われた。ホラー小説(にして薄いな)を読んでいて笑うとは周りから変な誤解をうけるぞ。
 ―――自分がどんどん不機嫌になっていくのを見たのだろう、クラサワ女史はちょいちょいと手招きをする。
 ここは中学校。先輩の権力は強い。だから仕方なく行ってやろう。
 僕は妙な気合いを入れて彼女ののほうへと歩いていった。2、3歩でたどり着ける距離だが。

「……あの子、いるよ♪」
「そうですねぇ」
「行かないの?」
「僕は無神経な男じゃありませんから。本を真剣に読んでいる人に声をかけるなんて悪いじゃないですか」

 クラサワ女史はパタンとその薄い本を閉じて、

「……ださー」

 と言ってくれた。

 はい。その通りでございます。
 でもね、クラサワさん。何か気が乗らないときってあるんですよ。
 なんかこう、どうでもなれーっていうという捨て身の勢いがね、身体の中にチャージされていない感じなんですよ。


「わたしが学校にいられる間に
 ちゃんと声をかけなさいよ。
 男の子でしょ♪」


 結局その日もあの女の子に声をかけられなかった。



■5■

 ヤバイ女に当たったのかもしれない。

 休みの日の間、ベットに寝ころびながらずっとそう考えていた。


 わたしが学校にいられる間に
 ちゃんと声をかけなさいよ。
 男の子でしょ♪


 気になることを言いやがって。「いられる間」ってなんだよ。問いかけもせずにそのまま流した自分もアレだが。
 学校の図書室が利用できる時間―――始業から放課後まで―――という意味で「いられる間」なんだろうか?それならわざわざあんなことを言うはずがない。当たり前のことだから。当たり前のことを強調するなんてそんなドラマ的なわざとらしさ―――サスペンスドラマの「さぁここが伏線ですよ。さぁ後は崖のラストシーンまでお楽しみ」みたいな―――が現実に取り得る行動なのだろうか。いやありえない。じゃぁなんた。非常に高度なおちょくり方か?ハイレベル過ぎてついていけねぇ。

 畜生。畜生。なんでこんなに気になるんだ。


 うんうん唸るだけで休日を消化した。
 ……なんてこった。


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  1. 2008/04/22(火) 23:52:00|
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図書室にて #3

■3■

 次の日の昼休みの図書室。
 あの女の子がいなかった。

「よっ。 微熱少年」

 代わりにあのデカイ女が独りで長机に肘をつき本を読んでいた。
 調子の良いときにくじ引きで外れを引いた気分、というのはこんな感じなんだろう。
 自分でも何言っているのかよくわからないけど。

「あの……」
「まだ来てないよ」

 もしやと思って確認したけど、やっぱり彼女はいないようだ。
 仕方なしの僕はそのデカイ女の前の席にに座った。

「倉沢。 2-Cの倉沢」
「は?」
「あたしの名前。知っておいて損はないでしょ?」
「……」

 コンビニでもらうレシート程度のご利益はあるかもな。

「あんたの名前は?」
「……カナザワ」
「カナザワ? 石川の?」

 一瞬このデカイ女―――ここは紳士らしく名前を呼ぼう―――クラサワさんが何を言っているかわからなかった。しばらく考えて、その質問が意図するところがわかった。

「キンのほうは合っているけど、サワは違う。細かいほう」
「あー、そっちか」

 いい加減な説明だけど、通じたらしい。


 その時、図書室の出入り口の扉が開いた。
 自然とそちらに目がいく。


 昨日の、一昨日の少女だ。


 靴紐を見る。同じ色だ。ということは1年生か。

「あ」

 クラサワさんのその小さな声を聞いた瞬間、心臓がドキドキし始めた。
 なんだか身体が固まって椅子に貼り付けられたようだ。身動きが取れない。

 少女はとたたたっと少し早足で僕とクラサワさんの前を通り過ぎると、そのまま幾列も並べられた本棚の奥へと消えていった。そしてしばらくすると、そのまま早足で図書室の出入り口まで行き、そのまま廊下へと出て行った。

 開いて、そして閉じてしまった出入り口ドア。
 僕はそれをじっと見ている。

「追いかけないの?」

 クラサワからの一撃。残酷な一言。どうしようかどうしようかと戸惑う自由を一瞬にして奪ってしまう必殺の一言。

「……今日は、いい」

 言ってしまってしまったと思う。こういう情けない態度にはきっとクラサワ女史から本の一撃がもたらされるだろう。

「ふーん」

 何も起こらなかった。
 ぺらりと本をめくる音。昨日の少女とは違って、まるで噛みしめるかのようなその音。

「ところでさ」
「え?」
「本、読まないの?」



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  1. 2008/04/22(火) 23:46:22|
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図書室にて #2

■2■

 これは恋だ。
 放課後、学校から塾に向かう途中で僕は確信した。
 ぐっと握りしめる右手。

 やっぱりこれは恋だ。
 家に帰りお風呂に向かう途中で再び確信した。

 これは恋か?
 ベットに入りちょっと疑問に思った。

 恋……。
 夢の中で再確認した。


 次の日の昼休み、僕は図書室に直行した。

 いた。
 昨日の彼女が同じ席で本を読んでいる。
 もう記憶のなかで何回リピート再生したかわからないその柔らかそうな髪の毛。
 もう記憶のなかで何度触ったかもわからないその白い指先。おっとこういう時は妄想というほうが正しいのか。

 その指先でぺらり、ぺらりとページをめくっている。ちょっと速いペースだ。
 ……頭が良いんだな。きっと。

 うんうんうんうんうんうんうんうん。彼女の情報一つ、ゲットだな。

 ……どすっ。

「ぐへっ」

 何かが頭の上から落ちてきた。

「あ、ゴメン」

 昨日も同じようなことあったな。
 頭をさすりながら室内履きのヒモの色を見る。オレンジ。2年生だ。
 うん、ここまでは昨日と同じ。

「うわっ。昨日の」

 その後の台詞が違った。ちょっと酷い方向に違った。
 その背の高い女子生徒は昨日と同じく本を両手で持っている。何十冊も高く重ねて。
 その内の一冊が僕の頭に落ちてきたのだ。じ、辞書だとぉ?

「本も読まず立っているなんで何してるの?
 ここ図書室なんだし。先生に怒られちゃうよぉー」

 重ねた本を近くの書見机に置きながら彼女は言う。
 たかが一年しか生まれ年が違わないはずなのに、この圧倒的な威圧感はなんなんだ。
 これが生徒を不幸にすると言う中学校というシステムなのか?ごめん自分でも何言っているかよくわからない。

「……すみません」

 とりあえず謝った。
 その表紙に制服の名札を見た。倉沢か。

「あの女の子のこと見ていたの?」
「えっ……」
「かわいーよね。人形みたい」

 どうやら僕の視線を推測したらしい。

「……」

 ちょっと嫌な気分。

「『深淵を覗くならば』」

 屈んで、ちょっと声を低めて彼女が僕の耳元で囁く。
 髪が僕のうなじに当たった。こそばやい。

「『深淵も同じくおまえを見返すだろう』」

「え?」

「ニーチェ」

 広がる長い髪を背景にその2年生女子はにっこりと笑う。

「……知ってる」

 確か台所用洗剤の名前だ。

「へぇ。そーいえばそーいうの好きそうな顔だわ」

 目を大きく見開いて彼女は言う。
 こうしてみるとやっぱりデカイな、この女。
 僕が平均よりも背が小さく、彼女が平均よりも背が大きいからか?

「……あの子、いつもここにいるの?」

「は?」

「いやだからさ。あんた図書委員なんだろ?
 だったらあの女の子がいつもいるのか?とか、
 いやそれよりもあの女の子の名前とか知らないの?」

 ふぅーとその女は呆れた表情で息を吐く。

「先輩」

 その女はちょいちょいと指先で己を指した。はいはいそうですか。

「あなた様は噂に名高い図書委員とお見受けしましたが、少しお尋ねしたいことがございます。あそこにいらっしゃる麗しき姫はいつもあの席においでになるのでしょうか?もしくあの方のお名前はご存じでしょうか候」

「ふざけてんの?」

 ちっ。

「すみません。少し聞きたいんですが、
 あそこの席に座っている女の子はいつもあの席に座っているのでしょうか?
 もしご存じならお名前も教えていただきたいのですが」

 うむうむ、と満足そうにうなずくデカイ女。

「あたし、ストーカーの手伝いなんかしたくないなー」

「だれがストーカー……!」

「うるさい」

 ずん。

 痛い。というか首にきた。
 この背の高い横暴な2年生女子(名札名:倉沢)は何か重い大型本を俺の頭から振り落としたのだ。

「……げ、『現代用語の基礎知識』
 それも微妙に古いもの……」

「古いから、こうして奥の倉庫に移動させるんでしょうが」

 どすっと書見机にに置かれている本の上に重ねる。これ結構重くね?

「いや、そうじゃなくて……」

 首をさすりながらそう言う。なにかヤバイ女子に当たったのかなぁ。

「……しらない」

「は?」

「だから、知・ら・な・い。
 あたしも図書室に毎日来るようになったのも最近だし、
 あの子がどこの誰なのか―――まぁ制服を見る限りうちの生徒だと思うけど―――まったく知らない」

「そっか……」

 ダメか。あんまり期待はしていなかったけど。
 どうしよう。このまま見ているしかないのかな?
 テレパスかなんかで僕の意志が彼女に届けば……ダメだ。いきなりテレパスで僕の意志を伝えても見ず知らずの他人からの発信(それもなんか血走っているもの)なんて迷惑メールとして捨てられるのがオチだ。ベイズ理論でポイだ。

「でも綺麗でかわいいー子ねー、
 何年生なんだろ?」

 うっとりという表情でデカイ女は図書室の少女を見つめる。
 えー……これって……。

「あー、あー。変なこと考えてる。
 単に感想を言っただけじゃない。あたし女の子が好きって訳じゃないよー」

「……ならいいけど」

 顔をぶんぶんと横に振る2年女子をため息とともに視界から追い出すと、僕はもう一度彼女のほうを見る。

 見てた?

 気のせいか、一瞬だけあのショートカットの女の子と目があったような気がした。
 気のせいなのか。彼女がページをめくる手が止まっている。

 よし。

 こ、声をかけてみる?


 脳内に「・声をかけてみる」「・そのままじっとみてる」という選択肢が現れた。脳内カーソルが前後左右斜めにゆらゆら揺れる。どぉーしよーぉかな。?


 ずっという椅子がカーペット床をこする音がした。
 いままで本をよんでいた彼女が席を立ったのだ。

 そして本棚のほうへすたすたと早足でいき本を戻し、おなじくすたすたと早足で図書室から出て行った。



 えーっ。


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  1. 2008/04/22(火) 23:42:28|
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図書室にて #1

■1■

 幼稚園の時、将来の夢はと聞かれて「探偵」と答えた。
 小学生の時、将来の夢はと聞かれた「探偵」と答えた。
 中学生の今、進学先として大学への進学に実績のある高校を選んだ。

 ゲンジツテキになった。
 本当を言えば小学生の時に探偵という職業がどんなものかと調べてみて、その仕事内容が自分の想像していたものとはまったく違っていて幻滅していたのだ。カッコイイ探偵というのは日本では漫画やアニメや小説などにしか生息していないらしい。
 でも小学生のときにゲンジツテキなことを書くと先生からの評価が下がりそうな気がしたので「探偵」と書いておいた。我ながら嫌な小学生だ。でもまわりにはもっと嫌な奴がいっぱいた。だからもっともっと嫌な奴にならなきゃなと思った。

 嫌な小学生を気取っていた自分が中学生になり、気づいたことがあった。

 自分は、小さい、人間だ。

 ちょっとしたウソをついたことで何故あんなにも得意げになっていたのか。
 まるで全世界から自由になったかのようなあの強気はいったい何だったのか。
 小さい、自分は器の小さい人間だ。

 逃げたかった。
 この小さな器に真空パックされている自分から。
 でもさすがに自分に合わせて作られた容器だ。

 ニ ゲ ラ レ ナ イ 。


 器から逃れる方法を求めて授業の合間に中学校舎を彷徨う自分はまるで亡霊。
 彷徨ったって幽霊にはなれないし、その他の人間以外のものにもなれない。
 でも、うろうろ、うろうろと彷徨うことでココロが楽になったのもまぎれもない事実だ。


 ある日の昼休み、僕は日課の彷徨いに出かけた。
 うろうろ、うろうろと歩く。理科室、音楽室、視聴覚室、保健室、体育館、更衣室、美術準備室。

 そして図書室。


 僕はそこで放浪を終えさせる運命の人と出会った。

 図書室の端っこで本を読む小柄なショートカットの女子生徒がいた。

 その白い肌を見て、思わず胸が高鳴る。
 彼女を見つめる僕の両眼。ココロに鳴り響く、チャペルの鐘。からーん、ころーん。

 からーん、ころーん。
 からーん、ころーん。
 からーん、ころーん。
 からーん、ころーん。

 ……どすっ。

「ぐへっ」

 何かが頭の上から落ちてきた。

「あ、ゴメン」

 見ると自分よりも背の高い女が本を両手で持っている。何十冊も高く重ねて。
 その内の一冊が僕の頭に落ちてきたのだ。ず、図鑑だとぉ?

 頭をさすりながら室内履きのヒモの色を見る。オレンジ。2年生か。
 1年の僕はどのような態度をすればいいのか。考えた。


「ゴメン。ゴメン。許してね」


 その背の高い長髪の2年生女子はけらけら笑いながら去っていった。
 108通りの返しを考えたが使われることはなかった。無駄だった。よくあることだ。


 まぁ、いい。そういう小さなことにはこだわることをやめたんだ。
 僕は大きな男になるんだ。そのために何をしたらいいかさっぱり判らないけど。


 頭をさすりながら、本を読んでいた女子生徒を再確認してみる。


「ありゃ?」


 もう彼女はその場にいなかった。


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  1. 2008/04/22(火) 23:38:44|
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  1. 2008/04/12(土) 01:34:30|
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true tears 13話 感想 ずっと、隣にって……なにそれ、プロポーズみたい。

true tearsがとうとう最終回を迎えました。
本当ならばTVKでリアルタイムで見て直ぐに感想を書きたかったのですが、

自分その日、富山にいました。
富山空港からの目的地への通り道にあるファボーレは相変わらずでした。

というわけで久しぶりのビデオでの鑑賞です。
今回はいつもと違って、ずらずらと感想を書き並べたいと思います。


見終わった瞬間は「おおぉ~」という感じでした。


■多分、救急車で担ぎ込まれたんだろうなぁ。

個人的には乃絵の骨折(骨にヒビが入ったのかな?)がちょっと意外でした。
着地次第では靱帯を切るとかならありえるかなぁ、とは思いましたが。
(いや、靱帯を切るってけっこうキツイですよ。)

でも
そんなことはどうでもいいのです。



■ゲームの後片付け。

四番と眞一郎の会話。「それだけか?」
四番と乃絵 の会話。「おまえは何もわるくない」
四番と比呂美の会話。「不服か?」

四番が初めたゲームだから、四番が後片付けをする。
偽悪的な態度でその役割を彼は淡々とこなした。
というか、不器用だよね。このすっきり行かない感じがtrue tearsなのかねぇ。



■彼女であることの証明書。

学校での眞一郎と比呂美。
クラスメイトの前でアパートへのお誘い。比呂美さん気合い入ってます。
猫と戯れる眞一郎君を見下ろす比呂美さんはまさに鬼神。
ずっと前の「まんとら」で西村監督が言っていた「アパートで女の子から誘われたらどうする?」はこのシーンのこと言っていたのか。
そりゃ、あれだけお誘い空気を出していて「……いいよ」って言われたら、
行っちゃいますよね……普通。(それで3ヶ月間くらい心配になるんだ。ゴム付でも。)

でもねー、付き合いの長い比呂美と眞一郎だから「加減」というのも分かったりしている可能性もあるわけで。
単に肉体関係を結びたいだけなら、もう少し比呂美が積極的に動いてもいいわけだし、
それに眞一郎の性格だとどんなにいきり立っていても、比呂美がちょっと嫌そうな素振りを見せると途中で止めそうだしね。
……こう考えると(自分でも言っていたけど)嫌な子だよなぁ。でもそういう素直な部分は良いよねぇ。



■見えてますよー、ひろみさぁーん。

TOMOYOさま一生ついてきます。
というか床反射パンチラとは、仕事が細かすぎる……。
見つけた奴もすげーけど。



■心が震えたとき……かな?

藤原 啓治の声はいつ聴いてもいいよなぁ。(個人的にはひろしよりもホランドだが)
ちなみに眞一郎父が読んでいる新聞のテレビ欄は

「NHK」「NHK教育」「サクラテレビ」「富川テレビ」「DDTテレビ」

なのですが富山の実在の放送局との対応は

「NHK」「NHK教育」「北日本放送」「富山テレビ」「BBTテレビ」

なんでしょうね。

あれ?チューリップテレビは?
つーか、富山テレビ=BBTテレビでダブっているし。まぁいいか。


ちなみに富山の新聞でtrue tearsを積極的に取りあげていた「北日本新聞」は「北日本放送」の系列です。
富山でのtrue tearsの放送は富山テレビが担当することになるわけですが、自分は県議の熱い努力で(それだけじゃないと思うけどさ)放送が決定したときは、新聞関係で北日本放送が担当するのかなぁとおもっていました。
そういやtrue tearsをTVニュースで取り上げていたのは富山テレビだったな。
ひょっとして舞台裏で北日本放送と富山テレビとの間で熱い争奪戦が繰り広げられていたりして。



■スポーツマンですから。

あらためて仲上家にやってくる比呂美。
「黒い手」を封印した比呂美は……なんて男前。

「邪魔するのもいやだから。
 ちゃんと……ちゃんと向き合って欲しいの。
 わたしとも、……石動さんとも」

ママンも麗しいですよ。
「やったぁ。今夜ごちそうになりにゆく」との息子の声を聴いたときの表情、
ぴきーん、とニュータイプ音が聞こえたのは幻聴でしょうか?



■待つのって……体力いるのよね。

眞一郎と乃絵のぐちゃぐちゃとしたやり取り。
こういう互いが自閉していく感じって、true tearsの味だね。

穏やかな日本海で紙飛行機(材料:絵本)を飛ばす眞一郎。
だけどそれは空を舞うことができずに、地べた(砂浜)に舞い落ちるだけ。
実写取り込みのCG加工の海岸のシーンってAIRを思い出すなぁ。(あっちは太平洋側、こっちは日本海。)

んで場面は変わって比呂美のアパート。
ぶり大根を持参したママン。
一瞬、眞一郎が比呂美の部屋にいるかどうかを確認した?

(なんか富山では嫁から姑へぶり大根を送る習慣がある、
 とかいう話がどこかであったけど、少なくとも今はそんな習慣はないない(笑)。)

で、今回のママンの一言。

「待つのって……体力いるのよね。」

この一言で比呂美母と眞一郎父とママンとの過去の確執を回収したのか?
重いぞ。重すぎるぞ。この一言。
つーか……眞一郎父、若いころよっぽど優柔不断だったんだろうなぁ……。
なんかこの一言で眞一郎父の今までの落ち着いたイメージががらがらと崩れてしまった。
多分無いけど、もしも湯浅夫妻と仲上夫妻との過去話をやるとしたら、ものすごぉーくアダルトな雰囲気になりそう。
正直、見たい。


■最後の一枚がない。

絵本を読み進める乃絵。
でも最後の一枚がない。


「眞一郎はわたしが飛べるって」
「信じてる」


「俺は、俺は、比呂美が好きだ。
 でも、お前を見てると、心が震える……」
「眞一郎がわたしが飛べるって信じてくれる。
 それが、わたしの翼」


 不自由な身体で去っていく乃絵。
 それを見送る眞一郎。

 でも、どんどん小さくなっていく乃絵の後ろ姿を見ていると
 整理したはずの心がもう一度ぐちゃぐちゃになって、身体からあふれ出しそうになって、
 心の震えが止まらなくて―――


 眞一郎の心の底にも湯浅比呂美ぃ!

と涙の絶叫。


 くっ、既視感がぁぁぁ。
 既視感が自分を苦しめるぅぅぅ。
 このアニメは記憶の奥底に閉じこめた自分の恥ずかしい過去をえぐり出す作品であることを改めて確認。
 ええ、泣きましたとも。だってもう、泣くしかないんだもん!



■ずっと、隣にって……なにそれ、プロポーズみたい。

そして思い出の竹林で再会する比呂美と眞一郎。

「付き合おう」
「……嫌」
「付き合おう」
「嫌っ!」
「おまえにはいつでも見てもらえる。
 これからは、ずっと……隣にいるんだし」
「ずっと……隣にって。なにそれ。
 プロポーズみたい。
 まだ……付き合うのOKしたわけでもないのに」

涙。

「あ、雪」

雪の降る街で、これからもずっと……。




■春。のえがすきだ。

……ようやく出てきてくれた愛子。


そしてエンディング。

地べたのいる鳥小屋。
壊れてしまった「のえがすきだ」という石の文字。
そのまえにすっくと立つ乃絵。

で、で、
ここでリフレクティアがかかるわけですよ。


もう鳥肌ですよ。
石の文字はどこかで使うんだろうなぁと思っていましたが、

壊れてしまった石の文字の脆さが、非常に切ない雰囲気を醸しだし、
それを包むようにリフレクティアが鳴り響き、
そのなかですくっと立ち、そして空を見上げる―――


うわぁあ、もうだめだぁ!
泣く泣く、自分、泣きます。

泣かせてくれぇ!




本当にいい作品だった。
一部分をサンプリングしたネタにはし難い作品だけど、
本当にいいドラマだった。

いい、これは、いい。


ココロのざわざわした部分を
こんなに優しく撫でるように提示してきてくれた作品に出会えたことを
本当に嬉しく思う。


true tears 最高っ!

テーマ:ture tears - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2008/04/01(火) 00:24:03|
  2. ひとりごと
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